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債務整理

任意整理・個人再生・自己破産の違いと選び方:借金・収入・残したい財産から考える

借金の返済が苦しくなったとき、債務整理には主に3つの方法があります。どれを選ぶかは、借金の額、毎月返済に回せる金額、残したい財産を中心に考えます。それぞれのしくみと違い、選び方の考え方を解説します。

執筆 弁護士 松井春樹(第二東京弁護士会)公開 2026年10月4日更新 2026年10月4日

この記事のポイント

  • 任意整理は、裁判所を使わずに将来の利息のカットと分割返済を交渉する方法で、元金は原則として減りません。
  • 個人再生は、借金を法律の基準まで減らし、原則3年で返済する方法です。住宅資金特別条項を使えば、住宅ローンのある自宅を残せる可能性があります。
  • 自己破産は、免責が許可されれば、税金などを除く借金の支払義務がなくなる方法です。一定の財産は処分されます。

債務整理の3つの方法

債務整理は、借金を減らしたり、支払いを待ってもらったり、支払義務をなくしたりするための手続の総称です。主な方法は、任意整理・個人再生・自己破産の3つです。

任意整理:将来の利息をカットし、分割で返す

裁判所を使わずに、弁護士が借入先と交渉し、将来の利息をカットして、元金を3〜5年程度の分割で返済する和解を目指す方法です。

  • 元金は原則として減りません。ただし、利息制限法の上限(年15〜20%。利息制限法1条)を超える金利で取引していた期間があれば、計算し直して元金が減ったり、過払い金が見つかったりすることがあります。
  • 整理する借入先を選べます。車のローンや保証人付きの借金を対象から外し、払い続けることもできます。
  • 利息のカットや分割の回数は交渉で決まるため、必ず応じてもらえるとは限りません。

個人再生:借金を法律の基準まで減らし、原則3年で返す

裁判所に再生計画を認めてもらい、借金を減らして、原則3年(特別の事情があれば5年まで)で分割返済する方法です(民事再生法229条2項2号)。

  • 利用できるのは、将来において継続的に、または反復して収入を得る見込みがあり、住宅ローンなどを除く借金の総額が5,000万円以下の個人です(同法221条1項)。
  • 小規模個人再生で最低限返済する額は、住宅ローンなどを除く借金の額に応じて、100万円未満なら全額、100万円以上500万円未満なら100万円、500万円以上1,500万円未満なら5分の1、1,500万円以上3,000万円以下なら300万円、3,000万円超5,000万円以下なら10分の1です(同法231条2項3号・4号)。
  • ただし、手元の財産をすべてお金に換えた場合の額(清算価値)を下回る返済計画は認められません(同法174条2項4号・231条1項)。会社員などが使える給与所得者等再生では、可処分所得の2年分以上という条件も加わります(同法241条2項7号)。
  • 住宅資金特別条項を使えば、住宅ローンの支払いを続けて、自宅を残せる可能性があります(同法196条・198条・199条)。住宅ローン自体は減りません。

自己破産:支払義務をなくす

裁判所に破産手続開始と免責を申し立て、免責が許可されれば、借金の支払義務がなくなる方法です(破産法253条1項)。

  • 99万円以下の現金や、差押えが禁止されている生活に必要な家財などを除き、財産は処分されて債権者への配当に充てられます(同法34条3項)。財産がほとんどない場合は、破産管財人を選ばずに手続が終わることもあります(裁判所「破産」)。
  • 税金や社会保険料、養育費、罰金などは免責されません(同法253条1項)。
  • 浪費やギャンブルで財産を著しく減らしたり、過大な借金を負ったりしたことは、免責不許可事由にあたります(同法252条1項4号)。ただし、裁判所は事情を考慮して免責を許可することができます(同条2項)。
  • 警備員、生命保険の募集人、宅地建物取引士など一部の職業は、破産手続開始から免責許可の確定(復権。同法255条)までの間、就けなくなります(警備業法14条1項・3条1号、保険業法279条1項1号、宅地建物取引業法18条1項2号)。

3つの方法の違い

  • 借金の減り方:任意整理は将来の利息など、個人再生は法律の基準まで、自己破産は税金などを除く全額
  • 返済:任意整理は3〜5年程度の分割、個人再生は原則3年の分割、自己破産は返済なし
  • 財産:任意整理は原則として影響なし(対象にしたローン中の車や、借入先の銀行にある預金を除く)、個人再生は残せるが清算価値以上の返済が必要、自己破産は一定の財産を除き処分
  • 裁判所・官報:任意整理は裁判所を使わず、官報にも載らない。個人再生・自己破産は裁判所の手続で、官報に公告される
  • 保証人:任意整理は保証人付きの借金を外せる。個人再生・自己破産では、保証人に請求が行く(民事再生法177条2項、破産法253条2項)
  • 職業の制限:自己破産だけにある(復権まで)
  • 信用情報:いずれも信用情報機関に登録され、一定期間、新たな借入れやクレジットカードの審査に通りにくくなる(登録期間は機関や情報の種類によって異なる。CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)

選び方の目安

まず、取引履歴を取り寄せて利息制限法の上限で計算し直し、正しい借金の額を確かめます。そのうえで、毎月返済に回せる金額と比べます。

  1. 利息がなくなれば、3〜5年で返せる見込みがある → 任意整理
  2. 3〜5年では返せないが、継続した収入があり、個人再生で減額した後の額なら返せる → 個人再生(住宅ローンのある自宅を残したい場合も)
  3. 収入や財産から見て、返済の見込みが立たない → 自己破産

このほか、資格の制限に関わる仕事をしている、ギャンブルによる借金が多い、家族に知られずに進めたい、車を手放せない、といった事情も選択に影響します。個人再生には、浪費やギャンブルを理由に手続を認めないとする定め(自己破産の免責不許可事由のような定め)がないため、浪費などが原因の借金でも利用できることがあります。最後に返済してから5年以上たっている借金は、時効を主張(援用)して支払義務を消せる場合もあります(民法145条・166条1項)。

依頼した後の流れ

弁護士に依頼すると、借入先に受任通知を送ります。貸金業者や債権回収会社は、受任通知を受けた後、正当な理由なく、電話や訪問などで本人に直接返済を求めることが禁じられています(貸金業法21条1項9号、債権管理回収業に関する特別措置法18条8項)。その間に取引履歴を取り寄せ、方法を決めます。なお、債務整理のご依頼は、日本弁護士連合会の規程により、弁護士が直接お会いしてお話を伺ったうえでお受けしています(債務整理事件処理の規律を定める規程)。

弁護士に相談するタイミング

返済のために借入れを重ねている、毎月の返済額が収入に見合わない、督促が来ている、といった段階でご相談ください。借金の額、収入、残したい財産を伺い、どの方法が合うか、それぞれの見通しと不利益をご説明します。

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執筆 弁護士 松井 春樹

第二東京弁護士会所属。弁護士法人越水法律事務所。東京大学法学部卒業後、森・濱田松本法律事務所を経て現職。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」でスポットワークの労働問題を解説(2025年9月)。

公式プロフィール ↗

参考資料

  1. 利息制限法(e-Gov法令検索)
  2. 民事再生法(e-Gov法令検索)
  3. 破産法(e-Gov法令検索)
  4. 民法(e-Gov法令検索)
  5. 貸金業法(e-Gov法令検索)
  6. 債権管理回収業に関する特別措置法(e-Gov法令検索)
  7. 警備業法(e-Gov法令検索)
  8. 保険業法(e-Gov法令検索)
  9. 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)
  10. 裁判所「破産」
  11. 株式会社シー・アイ・シー「信用情報の登録期間」
  12. 株式会社日本信用情報機構「登録される情報と登録期間」
  13. 全国銀行個人信用情報センター「センターについて」
  14. 日本弁護士連合会「債務整理事件処理の規律を定める規程」

法令は2026年10月4日時点の内容です。個別の事案への当てはめは、事情によって異なります。

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