債務整理
自己破産すると家族はどうなる?家族の財産・家族に知られるか・保証人への影響
自己破産を考えるとき、「家族に迷惑がかかるのではないか」と不安に思う方は多くいます。法律上、家族への影響は思われているより限られていますが、注意すべき点もあります。家族の財産、手続への関わり方、保証人、してはいけないことを解説します。
執筆 弁護士 松井春樹(第二東京弁護士会)公開 2026年10月4日更新 2026年10月4日
この記事のポイント
- 自己破産の効果は本人にだけ及びます。保証人になっていない家族に支払義務は生じず、家族名義の財産も原則として処分の対象になりません。
- 家族が保証人になっている借金は、本人が免責を受けても、保証人である家族に請求が行きます(破産法253条2項)。
- 返済ができなくなった後に家族にだけ返済したり、財産を家族名義に移したりすると、破産管財人に取り戻されたり、免責が認められない理由になったりするおそれがあります。
家族に支払義務はあるか
借金を返す義務を負うのは、契約をした本人と、保証人(連帯保証人を含む)です。保証人になっていない家族に、法律上の支払義務はありません。夫婦の場合も、日常の家事に関する債務(民法761条)にあたる場合を除き、本人が自分の名義で借りたお金を配偶者が当然に返す義務はありません。
貸金業者は、本人や保証人以外の人に、本人に代わって返済するよう求めることを禁じられています(貸金業法21条1項7号)。債権回収会社も、親族などに本人に代わって返済するよう、みだりに求めることを禁じられています(債権管理回収業に関する特別措置法18条7項)。家族に請求が来た場合は、支払う前にご相談ください。
自己破産の効果も、本人にだけ及びます。家族の信用情報に登録されることはなく、戸籍や住民票に破産の事実が載ることもありません。
家族名義の財産は処分されるか
破産手続で処分の対象になるのは、破産者本人が破産手続開始の時に持っている財産です(破産法34条1項)。家族名義の財産は、原則として対象になりません。
ただし、名義が家族でも、実質的に本人の財産といえるもの(本人の収入から積み立てた家族名義の預金など)は、本人の財産と判断されることがあります。夫婦で共有している自宅は、本人の持分が処分の対象になります。本人名義の自宅に家族が住んでいる場合も、自宅は原則として処分されるため、住み続けたい場合は、家族が買い取る方法や、個人再生の住宅資金特別条項(民事再生法196条・199条)を検討します。
家族が関わる場面
- 家計の資料:裁判所に提出する家計の収支の資料は、同じ家計で暮らす家族を含めた世帯全体について作るのが一般的で(裁判所の申立書の記載例など)、家族の給与明細などの提出を求められることがあります。
- 家族が保証人の場合:本人が免責を受けても、保証人への請求には影響しません(破産法253条2項)。保証人である家族に、残りの借金をまとめて請求されることが多いため、家族も含めて整理の方法を検討する必要があります。
- 家族からの借金:家族から借りているお金も、債権者の一覧に記載する必要があります。わざと記載しないと、免責不許可事由にあたるおそれがあり(同法252条1項7号)、その借金は原則として免責されません(同法253条1項6号)。債権者である家族には、裁判所から通知が届くことがあります(同法32条3項1号・251条2項)。
- 郵便物:破産管財人が選ばれる事件では、本人宛ての郵便物が破産管財人に転送されることがあります(同法81条1項)。
- 家族カード:本人名義のクレジットカードに付いた家族カードは、通常、使えなくなります。
ご本人の了解なく、弁護士からご家族に連絡することはありません。ただし、ご家族が債権者や保証人である場合は、手続の中でご家族に通知が届くことがあります。ご家族に知られずに進めたい場合は、どこまで協力が必要になるかを含めて、ご相談のなかでご説明します。
してはいけないこと
- 家族にだけ返済する:返済ができなくなった後に、家族など特定の債権者にだけ返済すると、破産管財人から否認され、家族が返還を求められることがあります(破産法162条1項)。親族や同居者である債権者は、返済ができない状態だったことを知っていたと推定されるため(同条2項1号・161条2項3号)、家族への返済は否認されやすくなります。期限前に返す、物で返すといった場合は、免責不許可事由にあたるおそれもあります(同法252条1項3号)。
- 財産を家族名義に移す:預金を家族の口座に移す、車や不動産の名義を家族に変える、家族に贈与するといった行為は、時期や目的によっては破産管財人に否認され(同法160条1項・3項)、債権者を害する目的で行えば免責不許可事由にもあたります(同法252条1項1号)。名義だけを家族に移しても、実質が本人の財産であれば、本人の財産として扱われます。債権者を害する目的で財産を隠したり、家族に譲ったように装ったりすると、詐欺破産罪として処罰されるおそれもあります(同法265条1項1号・2号)。
依頼の前に家族へ返済してしまった、名義を移してしまったという場合も、隠さずにご相談ください。事情を整理して、手続への影響を確かめます。
家族への影響を小さくするために
家族に知られたくない、家族の生活を守りたいという事情は、方法の選び方にも影響します。任意整理は裁判所を使わないため、家族の書類が必要になることは通常ありません。住宅ローンのある自宅に家族と住み続けたい場合は、個人再生が候補になります。どの方法なら家族への影響を小さくできるかを、収入や財産と合わせて検討します。
弁護士に相談するタイミング
家族に請求が来ている、家族が保証人になっている、家族への返済や名義変更を考えている、といった段階で、行動する前にご相談ください。
執筆 弁護士 松井 春樹
第二東京弁護士会所属。弁護士法人越水法律事務所。東京大学法学部卒業後、森・濱田松本法律事務所を経て現職。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」でスポットワークの労働問題を解説(2025年9月)。
公式プロフィール ↗参考資料
- 民法(e-Gov法令検索)
- 破産法(e-Gov法令検索)
- 貸金業法(e-Gov法令検索)
- 債権管理回収業に関する特別措置法(e-Gov法令検索)
- 民事再生法(e-Gov法令検索)
- 高知地方裁判所「破産申立書(記載例)」(家計全体の状況)
法令は2026年10月4日時点の内容です。個別の事案への当てはめは、事情によって異なります。
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