不倫慰謝料
不倫慰謝料の相場はいくら?金額を左右する事情と、二重に受け取れないしくみ
不倫の慰謝料は、いくら請求できるのか、いくら払えばよいのかが最も悩ましい点です。法律に金額の決まりはなく、裁判所はさまざまな事情を総合して判断します。一般的な目安と、金額を左右する事情を整理します。
執筆 弁護士 松井春樹(第二東京弁護士会)公開 2026年10月4日更新 2026年10月4日
この記事のポイント
- 公的な統計はありませんが、一般的な目安として、離婚・別居に至った場合は100万〜300万円程度、婚姻を続ける場合は数十万〜100万円程度といわれています。
- 婚姻期間、不倫の期間・回数、未成年の子の有無、発覚後の態度などで増減します。
- 配偶者と不倫相手は連帯して責任を負いますが、損害は一つなので、二重に受け取ることはできません(民法719条)。
慰謝料の金額は、どのように決まるか
不倫の慰謝料は、不法行為に基づく損害賠償で(民法709条・710条)、金額は法律で決まっていません。裁判では、さまざまな事情を総合して、裁判所が金額を決めます。
公的な統計はありませんが、一般的な目安として、不倫が原因で離婚や別居に至った場合は100万〜300万円程度、婚姻を続ける場合は数十万〜100万円程度といわれています。300万円を超える金額が認められることは多くありません。交渉では、裁判で見込まれる額を踏まえつつ、双方の事情や支払能力によって金額が決まります。
金額を左右する事情
増額の方向に働く事情
- 不倫が原因で別居や離婚に至った
- 婚姻期間が長い、未成年の子がいる
- 不倫の期間が長い、回数が多い、同棲していた
- 不倫相手が妊娠・出産した
- 不倫相手が関係を主導した、発覚後も関係を続けた、事実を否定し続けた
- 不倫によって、うつ病などの精神疾患を発症した
減額の方向に働く事情
- 婚姻を続けており、夫婦関係への影響が比較的小さい
- 婚姻期間が短い、不倫が短期間・1回限り
- 不倫の前から夫婦関係が円満ではなかった(破綻には至らない程度)
- 配偶者が関係を主導した、独身と偽っていた
- 不倫相手が謝罪し、関係を解消した
- 配偶者からすでに相当額を受け取っている
不倫が始まった時点で婚姻関係がすでに破綻していた場合は、不倫相手は原則として責任を負いません(最高裁平成8年3月26日判決)。不倫相手が「破綻していると信じていた」と主張し、そう信じたことに相当な理由があったかが争われることもあります(最高裁令和8年6月5日判決)。
不倫相手に請求できるのは「不倫による苦痛」の慰謝料
最高裁は、不倫相手に対しては、特段の事情がない限り、離婚させられたこと自体を理由とする慰謝料(離婚慰謝料)は請求できないとしています(最高裁平成31年2月19日判決)。特段の事情とは、不倫相手が、単に不貞行為をしたにとどまらず、夫婦を離婚させることを意図して婚姻関係に不当に干渉するなどして、離婚のやむなきに至らせたと評価できる事情をいいます。不倫相手に請求するのは、不貞行為によって受けた精神的苦痛の慰謝料です。
配偶者に対しては、離婚する場合、不倫を含む離婚の原因について慰謝料を請求できます。
二重には受け取れない:連帯責任と求償
配偶者と不倫相手は、共同して不法行為をしたものとして、損害の全額について連帯して責任を負います(民法719条)。両方に請求できますが、損害は一つなので、一方から十分な支払いを受けた分は、他方に請求できません。
不倫相手が慰謝料の全額を支払った場合、不倫相手は、配偶者が負担すべき部分を配偶者に請求(求償)できます(民法442条)。離婚しない場合は、求償を受けると家計からお金が出ていくことになるため、示談の際に求償権を放棄してもらい、その分を金額で調整することがよくあります。
弁護士費用・探偵費用は上乗せできるか
裁判では、弁護士費用のうち相当と認められる額が損害に含まれ(最高裁昭和44年2月27日判決)、実務では、認められた慰謝料の1割程度とされることが多くあります。探偵費用は、不貞行為の立証に必要だった範囲で一部が認められることがありますが、全額が認められることは多くありません。
請求された側の方へ
- 請求額が、上の事情に照らして目安の範囲か
- 既婚者だと知らず、知らなかったことに落ち度もなかったか
- 不倫の前から夫婦関係が破綻していなかったか
- 一括で払えない場合の分割払い、求償権の扱い、接触禁止や違約金の条項の内容
勤務先や家族に知らせると告げて支払いを迫る行為は、恐喝(未遂を含む)や脅迫・強要にあたるおそれがあります(刑法249条・250条・222条・223条)。期限を区切られても、慌てて署名する前にご相談ください。
弁護士に相談するタイミング
請求する側も、請求された側も、金額を提示する前・署名する前にご相談ください。事情を伺い、裁判になった場合に見込まれる金額の幅と、交渉の進め方をお伝えします。
執筆 弁護士 松井 春樹
第二東京弁護士会所属。弁護士法人越水法律事務所。東京大学法学部卒業後、森・濱田松本法律事務所を経て現職。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」でスポットワークの労働問題を解説(2025年9月)。
公式プロフィール ↗参考資料
- 民法(e-Gov法令検索)
- 刑法(e-Gov法令検索)
- 最高裁判所第三小法廷 平成8年3月26日判決
- 最高裁判所第二小法廷 令和8年6月5日判決(令和7年(受)第933号)
- 最高裁判所第三小法廷 平成31年2月19日判決
- 最高裁判所第一小法廷 昭和44年2月27日判決(弁護士費用)
法令は2026年10月4日時点の内容です。個別の事案への当てはめは、事情によって異なります。
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