パワハラ被害
パワハラの慰謝料請求:加害者と会社の責任、証拠と時効
パワハラの被害では、加害者本人への慰謝料請求に加えて、会社の責任を問える場合があります。請求の根拠、証拠の集め方、時効、心身の不調がある場合の労災申請の選択肢を解説します。
執筆 弁護士 松井春樹(第二東京弁護士会)公開 2026年9月30日更新 2026年9月30日
この記事のポイント
- 加害者には、不法行為(民法709条・710条)として慰謝料を請求できる場合があります。
- 会社には、使用者責任(同法715条)や、労働者の安全への配慮を怠った責任を問えることがあります(労働契約法5条参照)。
- 慰謝料請求の時効は、損害と加害者を知った時から原則3年(生命・身体を害した場合は5年)です(民法724条・724条の2)。
誰に請求できるか
加害者本人には、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料などを請求できる場合があります(民法709条・710条)。
会社に対しては、加害者が事業の執行について加えた損害について、使用者責任(同法715条)を問えることがあります。また、使用者は、労働者が生命・身体等の安全を確保しつつ働けるよう、必要な配慮をするものとされています(労働契約法5条)。パワハラを把握しながら放置した場合などは、この配慮を怠った責任を問えることがあります。
役立つ証拠
- 録音(日時が分かるように保存)
- メール、チャット、業務指示の記録
- 日記やメモ(日時、場所、言われたこと、周りにいた人)
- 同僚の証言、社内の相談窓口に相談した記録
- 医療機関の受診記録や診断書、休職の記録
慰謝料の金額
慰謝料の額は、言動の内容や期間、心身への影響、会社の対応、証拠の状況などによって大きく異なります。一律の金額をお示しすることはできませんが、ご事情を確認したうえで見通しをご説明します。
請求の時効
不法行為による損害賠償請求権は、損害と加害者を知った時から3年間、または不法行為の時から20年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法724条)。人の生命・身体を害した場合は、3年ではなく5年です(同法724条の2)。会社に対する請求は、根拠によって期間が異なることがあります。
心身の不調がある場合は、労災申請も選択肢
パワハラによって精神障害を発病し、治療や休業が必要になった場合は、労災保険の請求も選択肢になります。厚生労働省の「心理的負荷による精神障害の認定基準」(2023年9月改正)では、業務による心理的負荷の評価の中で、パワーハラスメントの具体例も示されています。
弁護士に相談するタイミング
退職を考えている、休職中である、会社に相談しても改善されないといった段階でご相談ください。誰に何を求めるかを、ご本人の希望に沿って決めます。
執筆 弁護士 松井 春樹
第二東京弁護士会所属。弁護士法人越水法律事務所。東京大学法学部卒業後、森・濱田松本法律事務所を経て現職。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」でスポットワークの労働問題を解説(2025年9月)。
公式プロフィール ↗参考資料
- 民法(e-Gov法令検索)
- 労働契約法(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年10月1日適用)
- 厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」
法令は2026年9月30日時点の内容です。個別の事案への当てはめは、事情によって異なります。
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