パワハラ被害
パワハラの定義と6つの類型:どこからがパワハラか
パワハラの3つの要素は法律に定められており、厚生労働省の指針が代表的な6つの類型を示しています。業務上の指導との違いや、2026年10月1日施行の改正のポイントも含めて解説します。
執筆 弁護士 松井春樹(第二東京弁護士会)公開 2026年9月30日更新 2026年9月30日
この記事のポイント
- パワハラは、①優越的な関係を背景とした言動で、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③就業環境が害されるもの、とされています。
- 指針は、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害の6類型を示しています。
- 2026年10月1日施行の改正法により、パワハラの規定は労働施策総合推進法31条(同年9月30日までは30条の2)に移り、カスタマーハラスメント対策の義務(同法33条)が新設されました。
法律上の定義
労働施策総合推進法は、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③その雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、事業主に雇用管理上必要な措置を講じることを義務づけています(同法31条1項。2026年9月30日までは30条の2第1項)。厚生労働省の指針では、この①から③までの要素をすべて満たすものが、職場におけるパワーハラスメントとされています。
「優越的な関係」は、職務上の地位が上の人からの言動に限りません。業務上必要な知識や豊富な経験を持つ同僚・部下からの言動で、その協力がなければ業務を円滑に進められないものや、同僚・部下からの集団による行為で、抵抗や拒絶が難しいものも含まれるとされています。
パワハラの6つの類型
厚生労働省の指針は、代表的な言動の類型として次の6つを示しています。
- 身体的な攻撃(暴行・傷害):殴る、蹴る、物を投げつけるなど
- 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言):人格を否定する発言、必要以上に長時間にわたる厳しい叱責の繰り返し、他の労働者の前での大声による威圧的な叱責の繰り返しなど
- 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視):仕事を外して長期間にわたり別室に隔離する、集団で無視して孤立させるなど
- 過大な要求:業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
- 過小な要求:業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない
- 個の侵害:私的なことに過度に立ち入る、機微な個人情報を本人の了解なく他の労働者に暴露するなど
業務上の指導との違い
指針では、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワハラには該当しないとされています。判断に当たっては、言動の目的、言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係性などを総合的に考慮することが適当とされています。
会社に求められる対応
事業主は、相談窓口の整備や、相談があった場合の事実確認・適切な措置など、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。相談したことや、会社の対応に協力して事実を述べたことを理由とする解雇などの不利益な取扱いも禁止されています(労働施策総合推進法31条2項。2026年9月30日までは30条の2第2項)。
2026年10月1日施行の改正のポイント
2026年10月1日施行の改正法(令和7年法律第63号)により、パワハラの措置義務の規定は30条の2から31条に移りました。あわせて、顧客や取引の相手方などの言動のうち、社会通念上許容される範囲を超えたもの(いわゆるカスタマーハラスメント)により労働者の就業環境が害されないよう、事業主が相談体制の整備などの措置を講じる義務が新設されました(同法33条。同日施行)。
弁護士に相談するタイミング
受けている言動がパワハラにあたるか判断がつかない場合も、ご相談ください。記録やメッセージから、あてはまる類型と取り得る対応を整理します。
執筆 弁護士 松井 春樹
第二東京弁護士会所属。弁護士法人越水法律事務所。東京大学法学部卒業後、森・濱田松本法律事務所を経て現職。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」でスポットワークの労働問題を解説(2025年9月)。
公式プロフィール ↗参考資料
- 労働施策総合推進法(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年10月1日適用)
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
法令は2026年9月30日時点の内容です。個別の事案への当てはめは、事情によって異なります。
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